良いフラッシュカードと悪いフラッシュカード:書き直しの実例集
一見よさそうなのに復習の時間を無駄にしがちな 6 枚のカード。それぞれのどこが足りないのか、そして本当に身につくカードへの書き直し方を紹介します。
役に立つデッキの作り方では、基本のルールを紹介しました。1 枚に 1 つのアイデア、自分で採点できる裏面、一緒に復習したいものごとにデッキを分ける、の 3 つです。ルールには誰でも頷けますが、気づかないうちに破ってしまうものでもあります。そこでこの記事はもう半分、つまり実例編です。ありがちなダメなカードと、どこがまずいのか、代わりに何を書けばいいのかを見ていきます。
文脈のない単語
英語を学んでいる人のカードです。
- 表:「mansion」 裏:「マンション」
一見問題なさそうですが、これは間違いです。英語の mansion は大きな邸宅のことで、日本語の「マンション」(集合住宅)とは違います。そして正しく直したとしても、このカードで鍛えられるのは単語の「引き当て」だけです。カードの上では分かっても、文の中で出てきたときには思い出せないかもしれません。単語は、実際に使われる場所に置きましょう。
- 表:「They live in a huge mansion outside the city.」 裏:「豪邸(日本語の「マンション」は apartment / condominium)」
さらに、逆向きのカードをもう 1 枚追加します。単語を見て分かることと、自分で言えることは別のスキルだからです。
- 表:「豪邸(英語で)」 裏:「mansion」
耳も鍛えたいなら、デッキの言語を英語に設定して(裏面の言語が違う場合はそちらも)表面を読み上げさせるか、音声クリップを埋め込みましょう。そうすれば、読むだけでなく聞き取る練習にもなります。
何を問うのかがはっきりしない質問
- 表:「1789 年に何が起きた?」 裏:フランス革命についての長い段落
これだと「だいたい分かっていた」と自分を納得させやすくなります。問う対象が 1 つにはっきり決まっていて、正解か不正解かがひと目で分かる質問なら、なんとなくの感覚で採点するのはずっと難しくなります。そういう質問をいくつか作りましょう。
- 表:「バスティーユ牢獄が襲撃されたのは何月何日?」 裏:「1789 年 7 月 14 日」
- 表:「1789 年 5 月、ルイ 16 世が 1614 年以来はじめて招集した議会は?」 裏:「三部会」
- 表:「1789 年 8 月 26 日に国民議会が採択した文書は?」 裏:「人間と市民の権利の宣言(人権宣言)」
小さなカード 3 枚のほうが、大きなカード 1 枚より復習が速く済むことが多く、しかもそれぞれが別々にスケジュールされます。何度も間違える日付はより頻繁に出てきて、もう覚えたものはあなたの時間をあまり取らなくなります。
1 枚に詰め込んだリスト
- 表:「体細胞分裂の各期を挙げよ」 裏:「前期、中期、後期、終期」
リストのカードには「部分点」がつきものです。4 つのうち 3 つ思い出せたら、正解とも不正解とも言い切れません。だから採点が毎回ぶれやすく、いつも忘れるその 1 つは、必要な分の復習を受けられません。項目ごとにカードを分け、その項目だけが答えになる質問にしましょう。
- 表:「体細胞分裂で、染色体が細胞の赤道面に並ぶのは何期?」 裏:「中期」
- 表:「体細胞分裂で、姉妹染色分体が分かれるのは何期?」 裏:「後期」
順番そのものが大事なら、それでもう 1 枚です。「中期の次は何期?」 裏:「後期」。
手順のように、順番どおりに全体を言えること自体が目的の場合もあります。そういうときはリストのカードが正しい選択になることもあります。ただし、各項目が別々にスケジュールされなくなることを承知のうえで、意図して作りましょう。
説明させる概念カード
- 表:「JavaScript のクロージャを説明せよ」 裏:教科書の定義
定義を暗唱できても、コードの動きを予測できるとは限りません。コードが実際に突きつけてくる形で質問しましょう。
-
表:「これは何を出力する?」
function counter() { let n = 0; return () => ++n; } const next = counter(); next(); console.log(next());裏:「2:返された関数は呼び出しの間も自分の
nを保持している」
確かめる答えは 1 つで、すぐに確認できます。しかも、考え方を理解していないと正解するのは難しいはずです。とはいえ、口頭試験や面接の練習のように「説明すること」自体が試されるなら、説明させるカードにも出番があります。
見た目でしか覚えていない公式
- 表:「解の公式」 裏:公式そのもの
毎回見ればそれと分かるでしょう。でもそれは、いつ使うのか、各部分が何を意味するのかを知っていることとは違います。部分について聞きましょう。
- 表:「ax² + bx + c = 0(a ≠ 0)で、b² − 4ac が負のとき、何を意味する?」 裏:「実数解を持たない」
- 表:「ax² + bx + c = 0(a ≠ 0)を x について解く公式は?」 裏:公式そのもの
2 枚目でも公式自体は練習します。ただ、名前からではなく問題から出発します。自分のカードでは、ここのようなプレーンな文字ではなく、ビジュアル数式エディタできちんと数式を書けます。
そのまま残した AI の下書き
AI 生成はデッキを作り始めるのに便利ですが、裏面を長く書きがちです。水の循環についての講義から生成された、よくある候補です。
- 表:「蒸発とは何か?」 裏:「蒸発とは、主に太陽の熱によって、水が液体から気体(水蒸気)へと変化する過程のことであり、水の循環において重要な役割を果たしている。」
裏面のほとんどは水増しで、水増しは復習中に読み飛ばされる部分です。声に出して答えるときに実際に言う部分まで削りましょう。
- 表:「沸点より低い温度で、液体の水が水蒸気になる現象を何という?」 裏:「蒸発」
裏面が短いことは、2 つのクイズモードでも大切です。「記述式」では裏面を入力します(大文字・小文字、句読点、余分な空白は区別されません)。「文の組み立て」では、裏面の単語にいくつかのダミーを混ぜたものを、正しい順番にタップして並べます。最初の版は記憶だけで入力するのがとても難しく、並べるタイルも山ほどになってしまいます。削った版なら、どちらのモードでも使えます。
どんなカードにも使える 5 つのチェック
カードを保存する前に、次のことを確認しましょう。
- 問う対象は 1 つにはっきりしている? 同じ答えの言い方が違うだけなら問題ありません。本当に別々の答えをいくつも正解にできるなら、分けるか、質問を絞りましょう。
- ひと目で採点できる? 判断のために裏面を読み返す必要があるなら、裏面が長すぎるのかもしれません。
- 必要なことを試している? 単語が分かることは使えることではなく、定義を暗唱できることは応用できることではありません。
- 図や音があると助けになる? それなら表面に埋め込みましょう。
- 実はリストになっていない? 順番そのものを覚えたいのでなければ、たぶん複数のカードに分けるべきです。
これらを満たすカードは、たいてい数秒で復習できます。そして、そういう短くて正直な復習こそが積み重なっていきます。